人材を活かすロープレ、潰すロープレ
ロールプレイングは、営業のみならず人材育成において効率よくスキルアップさせる手法の一つです。しかしながら、相手や時代にあったロープレ運営、内容でなければ効果がないどころか、逆効果になります。
自分の組織でロールプレイング【以下ロープレ】がうまく活用できているかどうかを知るバロメーターがあります。それは、組織員がロープレを嫌がっているかどうかです。ただし、組織員自身、以前の組織でロープレに対して良い経験がない、または、単なるイメージで嫌がっている場合は別ですが、一度自分の組織でロープレを行ったにもかかわらず嫌がっている場合、あまり良いロープレ運営ができていないといっていいでしょう。
私は、1980年代に、はじめてロープレをやっていただき、厳しいロープレ運営を受けるとともに自分も厳しいロープレ運営をしたこともありましたが、その後、自分の組織を持つようになりロープレの運営を変えて実施したところ、部下が自らロープレをやってほしいと依頼されるようになり、業績向上につながった経験からこのブログを書いています。
では、人材をつぶすロープレを事実に基づいてご紹介しましょう。1980年代、まだネットもパソコンも携帯もない時代。そんな昔のことなど現代に役立たないと思うかもしれませんが、そこでの失敗は現代のロープレ成功の実績に繋がっています。当時のロールプレは、達成率が悪いという表面的な数値をたてに公開処刑的に行われていました。ロープレ参加メンバーは上司、7年目、5年目、3年目の先輩、同期などがいる中で、業種、会社などの設定以外は、でたとこ勝負で時間やゴールも示されずに行われました。「何で売れないかわかるから、はいロープレやるよ」とスタート
何かミスや間違ったこと、先輩のアドバイスがあるとその場でロープレを止めて、助言、叱責があり、おわったらまたそこからスタート。時間にして30分。ロープレが終了すると悪いところをそれぞれの経験や視点から助言や悪い部分の指摘などが始まる。説明が言い訳に聞こえるとそこから炎上。使われる言葉もきつくオフタイムに合計1時間を費やし、いわれたことを修正すればば売れるという理屈でした。間違っていないことも少なくありませんが、スキル向上というよりは、「もう2度とロープレはされたくない」ので達成するために必死になる。いわば行動心理学でいう「嫌子を出現させ達成行動を強化させる」という動機付けに近いものでした。現代のZ世代ではメンタルが傷ついたり、パワハラ指導と評価されるでしょう。
特にこの時代の上司またはその上司に育てられた現代の上司は、厳しいことをいうことが部下育成に役立つこのことは間違いではないのですが、「失礼な言葉や言い回しで相手にダメージを与えること=厳しい教育」とが誤解していた人も少なくありませんでした。
コンサルをするようになってから、そうした組織の特徴で教育対象者の悪いところを探し、「教育対象者に対して●●には、こんなことをいってやった」などダメージを与えた自慢大会になっていることがあります。また、そういう人がいるとロープレが有効に使えなくなります。ではどのように運営すればよいのでしょうか。次回は人を活かす・育てるためのロープレについて書きたいと思います。
ちなみに人を潰すロープレの特徴は以下の通りです
◆人材を潰すロープレの特徴◆ 重症組織の場合 ①テーマ、時間、チェック内容などが決まっていない ②一方的なフィードバック【以下FB)になっている ③悪いことだけのフィードバックになっている ④言葉がきつい
軽傷組織の場合 ①プレーヤーがはうまくできていても何か言わなければならないと思っている ②何か言わなければならないと思うだけでなく、「できればこんなこともできたほうがいい」などテーマと的外れなことが多いFBになっている ③アドバイス側の知識スキルが低いがマウントをとるために発言がずれてしまう ⓸先ずプレーヤーに振り返りをさせない、チェックされたポイントの背景を聞かない ⑤お客様役をやる側が自分しか経験したことのないレアなタイプを演じ答えが狭い ⑥良い面も言おうとするが、具体的なスキルや知識ではなく「元気、明るい」など人柄的なことしか言えない。これはバランスよく見れないので、プレーヤーにとってレベルの低いことしか観られていない、悪いところしか観られていないと解釈しバカにされていると思ってしまう ⑦表面的な一つの数値からすべてを評価してしまい、一旦悪い面を評価するとそこからスキルが好転しても気づかずロープレテーマが変わらない。 これは評価スキルの経験不足や視野の狭さなどが原因で評価者研修などで出る「印象固定考課」という一度評価するとなかなか見方を変えられないことを言います【ハロー効果または後光効果とは違います】 これは経験スキルが不足して急激に評価者の仕事をするようになった人にや頭の固い人に多い落とし穴です。
ではどにょうなロープレがよいのでしょうか。これ以外にも答えをお持ちのかたもいらっしゃると思いますが、結論からいえば、悪いことを認識させるのではなく部下自身が良くなっていることを実感させられれば良いという事です。恐らくほとんどの方は当たり前と思ったと思いますが、部下が自分から「ロープレ願い出てくるようであればおっしゃる通り当たり前なのだと思います。
●運営時に気を付けたい事
ロープレには問題課題探しのロープレと課題・問題が分かっていてそれを解決するためのロープレ2つあります。人を潰しやすいロープレは前者の場合が多いので注意したいところです。日頃からマネジメントできていないと問題点や課題がわからずロープレをやらせて悪いところを見つけ指導した気になってしまい、部下は悪いところばかり指摘され自己肯定感が低くなり、ロープレのためのロープレをやるようになってしまいますので以下具体的に注意して運営したほうが良いでしょう。
◆設定を決める◆例相手企業のプロフ、担当者のタイプ、競合利用状況など営業の業種にもよりますふがあまり詳細まで決めると覚えきれずロープレ内容やFB内容がピンボケするのでテキドニする ◆時間を決める◆いくら通しで原因を見つけたいからといって30分以上ロープレを行うのはやるほうもみるほうも疲れてしまい、FBされても覚えていないこともあり納得度がさがり効果的な指導になりません。長くても20分までです。 ◆ロープレの範囲を決める◆時間の設定と併せてロープレでチェックしたい範囲を共有します。これが明確でないと時間が長くなったりすることにもつながります。 ◆時間を決める◆いくら通しで原因を見つけたいからといって30分以上ロープレを行うのはやるほうもみるほうも疲れてしまい、FBされても覚えていないこともあり納得度がさがり効果的な指導になりません。長くても20分までです。 ◆ロープレの範囲を決める◆時間の設定と併せてロープレでチェックしたい範囲を共有します。これが明確でないと時間が長くなったりすることにもつながります。 ◆ゴールを明確にする◆何ができていれば良いのかを明確にする。この時、指導者は完璧なロープレであるが指導者として何か言わなくてはと思い余計なことをいってしまうと、目的がぼやけけたり、本人の成長感や達成感を阻害してしまうので気を付けたい。
●FB時に気を付けたい事
◆FB順序◆1.先ずは本人振り返り、出てこない場合、指導者から拡大質問、テーマについての限定質問で聞き、2.指導者よりFB、オブザーブがいればここまで出た指摘以外で述べさせる。 ◆FBルール◆1.良い点と悪かったという言葉を使わず、気になった点と言い換え同様同じ数だけ出す。2.あくまで達成率に繋がっていると思われる原因に絞ってFBすること3.最後に指導者がまとめ修正点だけでなく良かった点特に良くなっている点(ここは日頃から見ていないとわからない)を伝え自信につなげ次はどのようなテーマでやるのか、またはやるやらないの判断などもこの時に行う
◆重症の手当ではなくテーマが決まっている場合のロープレについて
良い管理者のロープレはほとんどがこのケースです。なぜならば、表面的な数字やたまたま気づいた切り取り事実ではなく、日頃からよく見ていて傾向や原因を掴んでいて結果との因果関係がわかっているので明確なロープレのテーマを与えることができます。ここで良い例を示していきます。
■予め面談をして、現状の課題の確認とすり合わせ、ロープレの目的や内容、うまくできた時の今後の効果などを話し、どうなったら良いのか運営内容、テーマ、設定状況の告示し、予習ができるよう時間と環境を与えます。
ロープレ運営の仕方は前述の通りです。ここまでを読んで、それじゃ「出来レースじゃないか」「メンバーのためにならない」と思った方は昭和感覚をお持ちなのかもしれません。
昔の教育者はロープレの際に、悪いところを探し何かを気づかせ、刺激することと勘違いしている人が少なくありませんでした。(自分の優位性を見せたがる人がいるとしたら論外)特にZ世代にはそれでは通用しないし成長に結びつきません。ロープレは納得した課題をクリアできるよう練習し、自己肯定感を高めることこそが重要なのです。そこを勘違いしたくないところです。
もう、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、現代のロープレは運営そのものではなく、日頃からマネジメント視点でよく見ていることやロープレに臨む前の課題のすり合わせや納得感が大事であり、ロープレ前の今でいう1ON1などでしっかりとコンセンサスを得ることが大切だということです。
補足ですが、最近1ON1で何を話してい善いかわからない人は管理監督者ロープレ運営には力不足です。
昭和平成はノミニュケーションで部下を掌握しながら自分のことや組織のことを伝える、そして公私の夢などを共有したりし予め話しやすいリーレーションづくりができましたが、上司部下のコミュ力の低下とともに、ノミニュケーションは仕事ととらえるので、部下を掌握できず1ON1言葉を変えて話す場面を作っている人もいるようですが、関係性もできていないので話す場があっても話しにくいという状況になっているのではないでしょうか。
従いまして、管理監督者は日頃からよく見てマメなコミュニケーションで部下を理解しないと1ON1を設けてもロープレを実施しても効果がでにくいということを理解しておいたほうがいいかもしれません。とはいっても、日常の一部を切りとり、一方的な1ON1は何も見ていない管理監督者よりもよくないので気を付けたいところです。
管理監督の一助になれば幸いです。